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第16回

相談例46.チタン2種ティグ溶接のポロシティの抑制

板厚2mmの純チタン(チタン2種)をティグ溶接したところ、溶接線全長(300mm)に亘り、小さなブローホール(径0.5mm程度)が発生して困っております。ポロシティ抑制対策を教えて下さい。
 溶接ビード表面は金色で、熱影響部の変色もありませんし、引張試験および曲げ試験結果も良好でした。開先加工はアルゴンを用いたレーザ切断で行っており、切断面をロータリーバー(超鋼バー)で平滑に仕上げた後、アセトンで拭き取り洗浄しています。なお、作業室には天井がなく、上から埃などが入る可能性があります。

回答

チタンの溶接で、ポロシティが発生し易いのは、空気中の酸素、窒素、および水分の他、材料に付着している油等の汚染物質が、不純物として溶融金属に吸収されるためです。このため、溶接部を空気から遮断すると共に、汚染物質を除去することが重要です。その他、溶接施工条件もポロシティの発生に影響します。ポロシティ低減のための一般的な対策を溶接施工順に述べると、次のようになります。

(1) レーザ切断は熱加工ですから、切断面に酸化層が生じています。ロータリバーで仕上げる場合、酸化層を除去すると共に、研磨残渣が仕上げ面に残らないようにして下さい。また切断エッジのバリ等もポロシティ発生の要因となるので、きれいに除去して下さい。
(2) 前処理のクリーニングが最も重要です。まず、開先面および開先近傍をチタン専用のステンレスワイヤブラシでブラッシングし、その後、アセトン洗浄します。この場合、開先エッジ部の傷には溶剤や、研磨残渣が残り易いので、特に注意が必要です。アセトン洗浄は、洗浄液糟への浸漬が理想です。しかし設備面から無理な場合、アセトンを流しながらの洗浄を推奨します。拭き取りの場合、汚れた脱脂綿で拭くことは厳禁です。脱脂綿の清浄度に十分注意して下さい。汚れた脱脂綿で拭くと、清浄にするどころか汚すことになりかねません。
(3) 化学洗浄後は、直ちに溶接して下さい。長期保管する場合は、開先近傍をビニールシートで覆う等の処置を講じ、溶接前に再度のクリーニングが必要です。ポロシティが、なかなか解決しない場合は、溶接の数時間前に開先エッジ部を機械的方法か化学的方法で除去することを推奨します。
(4) 作業環境では、簡易的なビニールハウスを設置するなど、天井から粉塵等が飛来しないような対策を施すことを勧めます。
(5) ティグ溶接条件では、溶接速度を遅くすることが有効です。相談内容からは、シールドは良好と判断されます。

なお、チタンの溶接で小さなポロシティが多数発生する原因としては、溶接施工条件よりも、汚れや粉塵が原因となる場合が多いようです。


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