4.おわりに
本稿では、エレクトロスラグ溶接の溶融部の内部構造やその挙動を直接「観る」ことを試みた結果を簡単にまとめた。ここで紹介した結果は、エレクトロスラグ溶接の現象を解明し、新たな技術開発の端緒を切り拓く可能性を秘めていると期待している。一方、ようやく「観る」ことができたというステージに上がったというのも事実である。今後、種々の計測技術を活用した溶融部特性のより定量的な評価や数値シミュレーション技術との連携を通じて、エレクトロスラグ溶接プロセスの現象を「観える」から「分かる」へと引き上げていくことが重要である。
< 参考文献 >
1) 安藤弘平,和田宏一:エレクロトスラグ溶接現象の研究(第1報)―溶込み形成機構とそれにおよぼす極性効果の影響―,溶接学会誌,第39巻(1970),第7号,69-76.
2) 安藤弘平,仲田周次,和田宏一:エレクロトスラグ溶接現象の研究(第2報)―溶接条件が溶込みに及ぼす影響―,溶接学会誌,第40巻(1971),第10号,62-71.
3) 安藤弘平,仲田周次,和田宏一:エレクロトスラグ溶接現象の研究(第3報)―フラックスの種類を変えた場合の溶込み―,溶接学会誌,第40巻(1971),第11号,28-34.
4) 安藤弘平,仲田周次,和田宏一:エレクロトスラグ溶接現象の研究(第4報)―ワイヤの溶融速度―,溶接学会誌,第42巻(1973),第2号,18-25.
5) Y. Ogino, S. Fukumoto, S. Asai and T. Tsuyama: "Direct observation and numerical simulation of molten metal and molten slag behavior in electroslag welding process", Welding in the World 64, 1897-1904 (2020)
< 略 歴 >
荻 野 陽 輔 (おぎの ようすけ) |
2009年3月 大阪大学 工学部 応用理工学科 卒業 2014年3月 大阪大学 大学院 工学研究科 マテリアル生産科学専攻 2014年4月 大阪大学 大学院 工学研究科 特任助教 2015年11月大阪大学 大学院 工学研究科 マテリアル生産科学専攻 助教 現在に至る |