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摩擦攪拌接合における塑性流動の可視化技術

富 山 大 学
山根岳志、小里京平、森優詞、朝長直也、高野有紗、川西祥一、柴柳敏哉

1. はじめに

摩擦攪拌接合(Friction Stir Welding: FSW)は、接合ツールに接する母材の一部がツールとの摩擦発熱により軟化し、接合面に沿って移動するツール周囲の塑性流動により接合面を形成していく溶融を伴わない接合法である。ここで「塑性流動」は金属の高温変形を基調としている1-3)

接合ツールは図1に示すように、ショルダならびにプローブと呼ばれる2つの部分で構成されており、本稿では主としてプローブの周囲で生ずる塑性流動が対象となる。

図1 摩擦攪拌接合ツールの一例

塑性流動はFSW継手の良否、すなわち継手組織や接合欠陥形成などと大きく関わるため、この最適化は工業的に重要検討課題であり、さらにその指針策定には高温の材料挙動を扱う学術知識が必要不可欠となる。

塑性流動の研究は、直接観察法と間接観察法に大別される。前者は強力X線を用いた透視技術により金属材料内に予め埋め込まれた小球の軌跡を三次元的に解析するものである4,5)。後者は、これも母材内に埋め込んだ小球などが軌跡解析用のマーカーとして用いられる点では同じであるが、接合後に母材内に存在するマーカーを観察する手法である、前者が非破壊かつ動的観察であることに対して、この方法はその逆である6-8)

さて、上記の流動観察技術が実際に接合に供される金属材料の塑性流動が研究対象となったのに対して、透明な物質を模擬材料として用いることで直接的に流動を可視化するという手法もある。これはかつて、プラスチシンという商標で呼ばれた、色の異なる粘土の積層板を圧延して圧延加工時の板厚内のせん断変形量を解析した手法9)や、ワックスを用いて圧延鋳造時の流動を伴う凝固現象を可視化した手法10)と同類である。すなわち目的の金属とは異なる物質を用いて実際にこれと同じことが起きているだろうという前提でなされる流動可視化技法である。

本稿では、筆者達のグループ(富山大学)で取り組んできている「透明作動流体」を用いたFSW塑性流動の可視化技術開発について現状と展望を解説する。


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