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摩擦攪拌接合における塑性流動の可視化技術

6. 接合ツールの設計と接合の実際

本節では、我々が開発した「ダブルスパイラルツール」と呼ばれる接合ツールの開発経緯を下敷きにして、本可視化システムの具体的な応用例を紹介する。

図12は、通常のツール(シングルスパイラルとここでは称する)とダブルスパイラルツールの形状を模式的に示したものである。ここではピッチとリードという2種類の用語をまず理解する必要がある。ネジ山間の距離をピッチと呼び、ネジが1回転すると進む距離をリードと呼ぶ。通常ツールは、ピッチとリードが同じ値である。これに対して、ダブルスパイラルの場合はリードがピッチの2倍になっている2条ネジと呼ばれるネジである。

図12 接合ツールの形状

このダブルスパイラルツールの効果を塑性流動の立場で見てみる。ポイントになるのは物質輸送量である。理論的には一回転当たり2倍の輸送量であり、ツール回転速度を変えずに摩擦攪拌領域の拡大が期待できる。この仮説を可視化システムにて検証した例を図13に示す14)。流体の特性の影響も受けているとはいえ、シングルとダブルでマーカーの移動速度は後者の方が大きい。

図13 接合ツールの形状による流動性の違い
(a),(b) シングルスパイラルツール (5回転半で先端部に到達)
(c),(d) ダブルスパイラルツール (4回転半で先端部に到達)   

この結果を受けて、実際にダブルスパイラル形状の接合ツールを作り、5083アルミニウム合金とAZ31マグネシウム合金板の突き合せ接合を行い、継手断面組織をシングルスパイラルの場合と比較観察した結果を図14に示した14)。接合条件は、ツール回転速度:600rpm、ツール移動速度:50mm/min、オフセット無しである。前進側にアルミニウム合金を配した。(a)および(b)はそれぞれシングルおよびダブルの場合で、攪拌部領域の大きさが明らかに違うことが示されている。

図14 A5083アルミニウム合金とAZ31マグネシウム合金の摩擦攪拌接合接手断面組織(600rpm, 50mm/min.)
(a)シングルスパイラルツールを用いた場合
(b)ダブルスパイラルツールを用いた場合   

このように、接合ツールの設計結果を即座に模擬ツールによる流動可視化評価に供することができた。その結果を実際の接合実験にて検証してツール設計に反映させるといったツール開発サイクルを形成することができ、その有効性が上記データにより確認されたのである。

7. 今後の展望

模擬ツールの設計・三次元造形による試作、作動流体の開発、3方向からの同時観察、ならびにPIV計測のそれぞれを一体的に運用できるFSW塑性流動観察システム(Visual FSWと呼んでいる)が実戦投入の段階に入った。

これからは、対象とする金属材料の高温変形データとリンクした作動流体設計が直近の課題となり、それと並行して異材接合における流動を動的に観察する技術の確立、さらには現在樹脂にて成型している模擬ツールの段階から金属造形プリンターの援用により通常の機械加工では不可能な形状のツール試作とその有効性の検証ならびに製造現場への実装と歩を進めて行くことになる。


(WE-COM会員のみ)