相談例49.銅(C1020)の溶接
板厚35mmの純銅(C1020)のティグ溶接を検討しています。溶接長さは120mm程度で、V形開先を用い、予熱は450℃、溶接電流は380A、ジェットタガネによるピーニング処理を考えています。次の2点について教えて下さい。
1) 保有している溶接機では棒プラスの設定ができません。棒マイナスでの施工は可能ですか?
2) 施工における注意点は何ですか?
回答
1)電極の極性(棒マイナスの施工)について
無酸素銅のティグ溶接では、棒マイナスでの施工が一般的です。 無酸素銅の場合、アルミニウムの場合に存在する強固な酸化被膜を、棒プラスによって破壊する必要がないためです。なお銅系材料でもアルミニウム青銅系では、クリーニング作用による酸化膜除去を期待して棒プラスの場合もあります。
無酸素銅のティグ溶接では、棒マイナスでの施工が一般的です。 無酸素銅の場合、アルミニウムの場合に存在する強固な酸化被膜を、棒プラスによって破壊する必要がないためです。なお銅系材料でもアルミニウム青銅系では、クリーニング作用による酸化膜除去を期待して棒プラスの場合もあります。
2)厚板の銅(C1020、板厚35mm)溶接施工に関する注意点
a) 開先
溶接熱ひずみの大きい銅の場合、35mmの厚板をV開先で溶接すると、角変形が大きくなりますので、X開先の方が良いと思われます。
b) 予熱
予熱温度は考えておられる450℃から少し上げた方が良いかもしれません(表1)。なお、施工中は、その温度を保持し続けることが重要です。
a) 開先
溶接熱ひずみの大きい銅の場合、35mmの厚板をV開先で溶接すると、角変形が大きくなりますので、X開先の方が良いと思われます。
b) 予熱
予熱温度は考えておられる450℃から少し上げた方が良いかもしれません(表1)。なお、施工中は、その温度を保持し続けることが重要です。
表11) 銅・銅合金の溶接における予熱温度、溶接材料の選定例

c)ピーニング
ジェットタガネによるピーニングは結晶粒の微細化、高温割れリスク軽減の観点からも実施すべきと考えられます。さらに厚板の多層多パスの溶接施工ではパス毎のビード表面酸化皮膜の除去効果も期待できます。
d)施工上のテクニック
Welding Handbook2)には、次の記述があります。参考にして下さい。
① ストリンガビードあるいは幅の狭いウィービングビードで施工し、幅広のウィービングは避ける。(エッジの酸化防止のため)
② 初層は底まで十分溶け込ませ、溶接金属の脱酸を十分行い、割れを防ぐ。
③ ビード形状が良くなるように、溶接速度を調整する。溶接速度が速すぎるとビードが凸状となり、エッジに沿ってアンダフィルとなる。
<参考文献>
1) 溶接学会・日本溶接協会編、溶接・接合技術総論、産報出版(2015), p.203
2) American Welding Society、Welding Handbook 8th edition (1996) vol.3, p.183 / 9th edition (2015) vol.5, p.237
1) 溶接学会・日本溶接協会編、溶接・接合技術総論、産報出版(2015), p.203
2) American Welding Society、Welding Handbook 8th edition (1996) vol.3, p.183 / 9th edition (2015) vol.5, p.237