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第18回

相談例54.STPL380-S材とSCPL1との溶接における溶接棒の選定と溶接条件について

化学薬品の出荷設備配管工事をするにあたり、次の2つのWPSを検討しております。

(1) 低温配管用鋼管 STPL380-S sch40 100A同士の溶接
(2) 低温高圧用鋳鋼品 SCPL1の溶接バルブとSTPL380-S sch40 100Aとの溶接

これらの溶接で、望ましい溶接棒の選定と溶接条件(開先形状・電流・電圧)を教えて下さい。
 検討中の案は、溶接法:ティグ溶接、溶接棒:JIS Z3316 W49A3U16またはJIS Z3316 W49A6N1、開先角度65°、ルート間隔3〜4mm、初層は棒径Φ2.0mm、電流値90〜110A、電圧15V、2層目以降は棒径Φ2.4、電流値110A〜140A、電圧15Vです。
 施工法確認試験では浸透探傷試験、引張試験、曲げ試験、シャルピー衝撃試験(目標遷移温度で実施)を予定しております。

回答

次の回答を参考にWPSを作成して下さい。

(1) 溶接棒はJIS Z3316 W49A3U16、JIS Z3316 W49A6N1のいずれも適用可能ですが、衝撃性能(47J)を保証する下限温度がJIS Z3316 W49A3U16は-30℃、JIS Z3316 W49A6N1は-60℃であり、低温じん性確保にはW49A6N1を使用がベターです。ただし、JIS Z3316 W49A6N1の場合はバックシールドが必須となります。
(2) 溶接条件に関しましては検討中の案で問題ありません。
 なお、今回の試験には硬さが含まれていませんが、溶接金属は焼き入れ性が高く、多層溶接時の最終パスはビッカース硬さが240HV程度になります。耐食性の観点から、最終層は振り分けや冷却速度を遅くする条件 (入熱やパス間温度を高くする)の適用が有効です。
 もし溶接部の耐アンモニア腐食性を考慮する必要がある場合には、ビッカース硬さを200HV以下にするのが一般的です(図1参照)。

図11) 低温用圧力容器鋼SLA325の溶接部の硬さと
  液体アンモニア中での応力腐食割れ深さ

<参考文献>
1) 中原正大、材料と環境討論会講演集、‘99B-309S


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