2.2 鉄鋼材料の溶接におけるアークの安定性
鉄鋼材料のアーク溶接では、シールドガスに100%不活性ガスを用いるミグ溶接を適用することはまれであり、アルゴン系混合ガスもしくは炭酸ガスを用いるマグ溶接の適用がほとんどである。マグ・ミグ溶接では、一般に溶接ワイヤをプラス極、母材をマイナス極とすることが多い[注1]が、鉄鋼材料のミグ溶接の場合、母材表面を陰極点が走り回り(図4の動画)、それに伴いアークが不安定に振れ、図5の様に溶接ビードが不整になるからである。これは、鉄の熱電子放出能が低いために、少しでも電子を放出しやすい場所を求めて溶融池周辺部にも陰極点が迷走することが原因である。
[注1] REM添加の様な特殊なワイヤを除いて、ワイヤをマイナス極とした場合は、溶接ワイヤ先端近傍で陰極点が走り回り、アークが非常に不安定になる。
図4 100%アルゴン雰囲気中でのアークの挙動(2500コマ/秒)
(アーク中心から離れた溶融池周辺に陰極点が走り回る様子を示す)
(図をクリックすると動画が再生します)

図5 鉄鋼材料でのミグ溶接のクレータ付近の不整なビード外観
(クレータ前方・側方に陰極点形成によるクリーニングアクション領域が見られる)
これを避けるため、鉄鋼材料の溶接では、不活性ガスに酸素や炭酸ガスなどの酸化性ガスを混合したシールドガスを用い、溶融池表面に酸化膜を形成することによって、安定した陰極をワイヤ直下の溶融池内に形成させる手段が用いられる。図63)に炭酸ガスの添加量と陰極点が走り回ることで形成されるクリーニングアクション域の幅との関係を示す。アルゴンガスに1.5%程度以上の炭酸ガスを添加することで、陰極点の不安定な挙動が防がれていることが判る。 酸素の添加については1.1% の添加で同様な効果が得られるとの報告4)がある。

図6 溶接ビード側面に形成されるクリーニングアクション領域幅と
シールドガス組成の関係3)









