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シールドガスのアーク現象、溶接金属性能に及ぼす影響

2.3 マグ溶接における溶滴移行への影響

溶接ワイヤの溶融を伴うマグ溶接の場合、特にアーク力が大きくなる高電流域(230A程度以上)での溶接になると、アーク発生形態の変化により溶接ワイヤの溶融挙動もシールドガスの影響を大きく受けるようになる。

代表的な例として、図7に炭酸ガスをシールドガスに使用した場合、図8にアルゴン系混合ガス(Ar+10%CO2)を使用した場合のアーク発生状況、溶滴移行状況を、高速度ビデオで観察した結果を示す(動画)。参考の為、図95)にIIWによって定義されたマグ・ミグ溶接における溶滴移行形態の種類を示しておく。

図7 100%炭酸ガスでのアーク発生形態ならびに溶滴移行状況
φ1.2mm、280A、2500コマ/秒)
(図をクリックすると動画が再生します)

図8 アルゴン系混合ガス(Ar+10%CO2)でのアーク発生形態ならびに溶滴移行状況 (φ1.2mm、280A、2500コマ/秒)
(図をクリックすると動画が再生します)

図9 IIWにより定義された溶滴移行形態の種類5)
(ドロップ移行と反発移行を総称してグロビュール移行、プロジェクト移行とストリーミング移行とローテーティング移行を総称してスプレー移行と呼ばれる。)

シールドガスが炭酸ガスの場合には、熱的ピンチ効果によって、アークは収縮し、ワイヤ先端に形成された溶滴の下部から集中して発生している。その結果、溶滴は強いアーク反力によって大きな液滴になるまで保持され、やがて、不安定に離脱する(反発移行)。この時、大粒のスパッタが発生しやすい。一方、アルゴン主体(Ar+10%CO2)のシールドガスでは、アークはフレア状に拡がり、溶融した溶接ワイヤは小さな液滴状で移行する(ストリーミング移行)。これは、アークがワイヤ先端の溶融部全体を包み込むように発生するためアーク圧力は分散され、また、液柱状になった溶融金属には電磁ピンチ力ならびにプラズマ気流によるせん断力が作用して小滴化を促進するためである。

図106)は、アルゴン系混合ガス中の炭酸ガスもしくは酸素の混合比率が溶滴移行形態に及ぼす影響について見たものである。混合比率の低い領域を見ると、約230Aを境に、グロビュール(ドロップ)移行からスプレー移行へと移行形態が変化していることが判る。この変化する電流値は臨界電流と呼ばれるが、酸素ガスの添加の場合には混合比率が高くなっても大きく変わらないのに対して、炭酸ガスの場合には混合比率が20%程度で急激に高電流化し、30%以上ではスプレー化しなくなる。これはアーク発生形態がこの程度の炭酸ガス比率になると緊縮型に変化し始めるためである。

この溶滴移行形態の移り変わりの混合比率ならびに臨界電流値はワイヤ組成によっても影響を受ける7)ことから、大まかな目安として理解しておくと良い。

図10 ミグ・マグ溶接の溶滴移行に及ぼすシールドガス組成の影響6)


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