2.4 スパッタ発生への影響
スパッタの発生は、除去作業に余分な工数が必要となることから、大きな問題であるが、シールドガスは前節でみた溶滴移行への影響を通してスパッタ発生量にも大きな影響を及ぼす。
図118)にシールドガス組成とスパッタ発生量との関係を示す。炭酸ガスの混合比が約30%を境にスパッタ発生量が急増しているが、これは、溶滴移行が安定なスプレー移行から不安定なグロビュール(反発)移行に変化することに対応している。特に、高電流の炭酸ガスアーク溶接では強いアーク反力によって、大滴のスパッタが飛散し、被溶接材に溶着してしまうことが問題であり、外観品質が重視される場合は、アルゴン系の混合ガスが用いられる。
しかし、近年、高機能な溶接電源が開発されてきており、短絡からのアーク再点弧電流の制御9)や2種類のパルス電流の組み合わせで溶滴移行を制御する方法10)など、炭酸ガスアーク溶接でもスパッタの少ない溶接が可能となりつつある。

図11 シールドガス組成がスパッタ発生に及ぼす影響
(100%CO2でのスパッタ発生量を100%とした相対値)8)
2.5 溶け込み形状への影響
高電流のマグ溶接では溶接ワイヤの溶融挙動の変化にともなって、母材の溶け込み形状もシールドガス組成に影響される。図1211)にアルゴン系混合ガス中の炭酸ガス比率が溶け込み形状に及ぼす影響を示す。炭酸ガス比率の低い範囲では、中央部が深くなったフィンガー状の溶け込み形状となる。このガス組成範囲は高温の溶滴が高速度で溶融池に突入するストリーミング移行に対応しており、溶接中央部に集中して熱が供給された結果であると思われる。炭酸ガス比率の上昇に伴い、プロジェクト移行(20%CO2)、グロビュール移行(30%CO2以上)へと溶滴移行形態が変化して溶滴の大滴化、低速化するに伴い、フィンガー状から丸みを帯びた鍋底状の溶け込み形状に変化する。

図12 シールドガス組成が溶け込み形状に及ぼす影響11)
フィンガー状の溶け込み形状は、フィンガーの付け根部の溶け込みが少ないことから、多層溶接の場合、融合不良につながる恐れがあり、高アルゴンガス比率の混合ガス使用時には注意を要す。また、フィンガー部は凝固速度が速いため、図1312)に示す様に、高アルゴンガス比率の溶接ではブローホールが生じやすくなる。このブローホールは溶接電圧が低くなると顕著に表れることから、適正な電圧の設定が重要になる11)。

図13 気孔欠陥におよぼすシールドガス組成の影響12)
(ソリッドワイヤ1.2φ,300A、30cm/min, 25L/min)
フィンガー状の溶け込み形成を避けるために、溶接電流をパルス化し、パルス条件をピーク電流期間の短かい複数回のパルスとして、溶滴を2mm以上に成長させてから移行させる試み13)や、ベース電流を臨界電流直下のグロビュール移行条件に設定し、溶滴が成長した時点で短時間のピーク電流を流して移行させる試み14)などがなされている。参考にされたい。
ティグ溶接ではシールドガス組成を適正化することで溶け込み深さを増す試みがなされている15)。タングステン電極の酸化損耗を防ぐために二重ノズルを用い、内ガスに不活性ガス、外ガスにアルゴン系混合ガスを流し、混合ガス中の炭酸ガスもしくは酸素ガスの添加量を変化させることで、溶け込み形状を変化させるというものである。
図1415)にその効果を示す。酸素ガス、炭酸ガス共に0.3〜0.5%の添加範囲で深溶け込み形状になり、少な過ぎても多過ぎても浅い溶け込み形状となる。この現象は表面張力差によって生じる対流(マランゴニ対流)の向きの変化で説明されている。溶鋼の酸素含有量がある範囲において、表面張力は温度が高い程、高くなることが知られており、マランゴニ対流はビード端部から中心部に向けて生じ、中央で衝突した流れは下向きに方向を変え、溶け込み方向に熱を輸送するためである15)と理解されている。

図14 二重シールドティグ溶接における炭酸ガス添加、酸素ガス添加が溶け込み形状に及ぼす影響15) a〜f :酸素ガス添加、A〜F:炭酸ガス添加








