3.3 ステンレス鋼の溶接金属性能への影響
ステンレス鋼においても、低合金鋼の場合と同様にシールドガス組成による溶接金属のじん性への影響が見られる。図2324)にオーステナイト系ステンレスSUS304での結果を示す。溶接金属の酸素含有量の減少に伴い、シャルピー衝撃値が増加している。破面には粒状の酸化物を起点とするディンプルが形成されており、酸化物により亀裂先端の延性が低下したため、吸収エネルギが減少したものと考えられている24)。

図23 SUS304鋼の溶接金属の酸素含有量がシャルピー衝撃値に及ぼす影響24)
一方、低合金鋼の場合とは異なり、ステンレス鋼特有のシールドガス組成の影響もある。図18で示したようにシールドガス中の炭酸ガスから解離した炭素原子は、溶接金属に吸収され、その炭素含有量は増加する。その増加は微量であっても、炭素は強力なオーステナイト安定化元素であり、ステンレス鋼の溶接金属のミクロ組織に影響を与える場合がある。ミクロ組織への影響の一例を図2418)に示す。シェフラーの組織図上で、○で示されたAr+3.5%O2の溶接では、フェライト単相領域にあったものが、●のAr+20%CO2の溶接では、炭素の増加により、ミクロ組織の一部にマルテンサイトが生ずる領域に移る。その結果、シャルピー衝撃試験において、Ar+20%CO2では、破面の一部に脆性破面が見られるようになり、吸収エネルギが低下した18)と報告されている。また、シールドガスからの炭素の増加はステンレス鋼の溶接金属の耐粒界腐食性にも影響を及ぼす18)との報告もあり、ステンレス鋼のシールドガスとしてはAr+O2系が好ましいとされている。
炭酸ガスアーク溶接でも溶接金属中の炭素量の増加を抑制するフラックス入りワイヤも開発されてきており25)、必ずしもシールドガスがAr+O2系に制約される訳ではないが、使用溶接ワイヤとの組み合わせで適切なシールドガス組成を選定することは重要である。

図24 シェフラーの組織図上で見たシールドガス組成のミクロ組織におよぼす影響18)








