トヨタ自動車株式会社
田 垣 文 乃
1. はじめに
自動車の製造においては、 接合、切断、溶着、表面改質等の様々な分野でレーザ加工の適用が進んでいる。レーザを用いた加工技術を図1に示す。 トヨタ自動車においても、図2に示すように、パワートレイン部品からボディーの組立てに至る各種の製造ラインに多数のレーザ加工機が稼働しており、レーザ加工は自動車製造に欠かせない生産技術となっている。本稿では、当社がこれまでに実施してきた代表的な事例をいくつか紹介する。
図1 レーザ加工技術
図2 レーザ加工適用例
2. 社内適用事例の紹介
2.1 トランスミッション部品へのレーザ溶接
従来、トランスミッション部品には電子ビーム溶接(EBW)を使用していたが、近年のレーザ溶接(LBW)技術の進化により、製品の品質確保が可能となったことに加え、設備価格の低下も相まって、工程スリム化とCO2の削減が可能なLBWに置き換えてきた。
LBWの適用として、図3に銅板の重ね溶接を実施した事例を示す。
図3 銅板重ね溶接へのレーザ溶接適用例
また、一部に焼結構造体を含むトランスミッション部品のEBWにおいては、溶接前の洗浄工程で、部品が水分を多く含んでしまうため、真空引き工程に時間を要する課題があった。この課題に対しこれまでは、真空引き時間の短縮を狙って、溶接前に乾燥工程を置く対策(図4)を行ってきた。さらなる工程削減を目的に、溶接品質に問題がないことを確認の上、EBWからLBWへ置換することにより 、乾燥工程の削減に加え、EBW特有の脱磁工程・真空引きも不要となり、コスト低減やCO2削減を実現した (図5)。
図4 焼結構造体を含む部品のEBW工程
図5 LBW工程(EBW比▲3工程)