相談例58.ティグ溶接の溶込み深さについて
板厚2mmのSUS304 を下板として、その上に板厚4mmのSUS304のリブを立てます。このT字隅肉継手をフィラーなし(ナメ付け)でティグ溶接した場合、一般的にどの程度の溶込みが得られるのでしょうか。
なお、タック溶接時(仮止め時)の継手にはすき間がないものとし、φ2.4mmのタングステン電極を用い、溶接条件はベース電流35〜45A・パルス電流75〜85A・パルスデューティ50%・パルス周波数20Hzで、溶接速度は15cm/分です。
回答
パルス電流が75〜85A、ベース電流が35〜45A、パルスデューティ(パルス周期に対するパルス期間の比率)が50%であれば、平均溶接電流は55〜65Aとなります。この程度の電流で板厚2mmのSUS材を溶接しても、得られる溶込み深さはせいぜい1mm程度と思われます。相談の溶接は、板厚2mmと板厚4mmの隅肉溶接ですから、そのルート部での溶込みはさらに少なく、1.0mm以下と推察されます。また、溶接時のねらい位置を厚板側(リブ側)にずらしているのであれば、ルート部の溶込みはそれよりさらに少なくなると考えてください。正確な溶込み深さは、断面マクロ試験で求めてください。
なお、パルス周波数20Hzは、中途半端な周波数のように思えます。パルス周波数20Hzでは、母材への入熱制御効果は中途半端なものとなりますし、パルス電流の作用も十分に得られません。特段の理由がないのであれば、パルス周波数を5〜10Hz程度に設定することを推奨します。
溶込み形状の一例として、平板のなめ付け溶接の断面マクロを添付します。参考にしてください。
低周波パルスティグ溶接の溶込み形状の例