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第21回

相談例61.A312 UNS No. S31254 (SUS312L相当) の開先・溶接条件や注意点について

A312 UNS No. S31254(SUS312L 相当) の配管及び継手の突合せ・すみ肉溶接を施工に関し、現場の溶接監督者から以下の要望が出されました。開先形状や推奨電流及び注意点とその理由を含めて教えて下さい。

1. ルートフェイスを0.5mm〜1.0mmと指示されましたが、小さすぎるので1.0mm以上にしたい。

2. 指示された溶接電流範囲(1層目 60A〜90A,2層目 90A〜130A)では溶接電流が低過ぎる。インコネル625はニッケルを多く含むため電流を高めにしなければ、うまく溶けないので、溶接条件を見直して欲しい。

回答

1. ルートフェイスを設ける目的は、溶融池を保持し溶け落ちを防止することにあります。ルートフェイスが小さ過ぎると溶け落ちし、大き過ぎると裏波が出にくくなります。従いまして、一般的には0〜2mmの範囲として、肉厚や溶接姿勢により選定します。希釈に関しては、ルートギャップや溶加材送り量が同じならば、ルートフェイスが大きい方が希釈は小さくなります。

2. ティグ溶接の場合は、ワイヤ径により電流を選択することが一般的です。2.4mmφならば、100〜200Aが適正範囲となります。その中で、溶接姿勢や開先形状により最適値を選定して下さい。

3. ルートギャップは、肉厚によりますが2〜3mmが妥当と考えます。広めが推奨される理由としては、溶融金属の粘性や濡れ性が多少変わっても安定して、裏波が出せるためと推測します。

4. 高電流・高溶接速度は逆の効果になります。低電流・低溶接速度で低入熱での施工を検討して下さい。

5. すみ肉溶接では、のど厚不足による強度低下に注意が必要です。溶加材の送り量も管理して下さい。

6. 配管溶接ではバックシールドが必須です。また、溶加材先端が空気に触れない様に、溶接中は先端をシールドガス内に保持する注意が必要です。

7. SUS312L等の高Moステンレス鋼の溶接金属ではMoの凝固偏析によりMo濃度が低くなった箇所が生じ、図1に示すように母材と同じ組成の溶接金属の耐孔食性は母材に比べて低くなります。その対策として、溶接材料には共金系ではなく母材よりもMo量の高いインコネル625等が用いられます。しかし、希釈が大きい場合にはMo量が低くなることから、希釈を抑えた施工に留意する必要があります。希釈率の目安としては約75%以下と考えられます。上記を前提に開先形状、施工条件等を決めれば良いと考えられます。


図1 高Moステンレス鋼の母材と溶接金属の耐孔食性


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