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第21回

相談例63.軟鋼同士の継手をSUS309系ワイヤで半自動溶接施工した場合について

設備の都合上、SS400同士のすみ肉溶接(板厚32mm、脚長9~13mm)を、半自動マグ溶接(シールドガスは100%CO2)にて、SUS309系ワイヤ(径1.2)(TS309-FB0)を用いて施工したいと考えています。施工する上で、高温割れを発生させないための注意点を教えて下さい。なおSS400は、高炉材と電炉材のどちらになるかは未定です。

回答

高温割れを発生させないためには、溶接金属でフェライト相を数%以上含む組織にすることがポイントです。SUS309系溶接材料そのものの凝固組織は、フェライト相を数%以上含んでいますが、実際の溶接金属はSS400との溶融混合により得られますので、溶接金属でフェライト相の量は希釈(SS400の混合率)の影響を受け、フェライト相が少なくなることに留意しておく必要があります。

化学組成から組織推定する方法として、シェフラの組織図がよく用いられます。図1に示すように、希釈された溶接金属はSUS309系溶接材料DW309とSS400に組成に相当する点を結んだ直線上の組成となります。図からわかるように、本件のケースではフェライト相が数%以上含む組織を得るには、希釈率を30%以下とすることが推奨されます。溶接金属の化学成分の管理は、最も希釈が大きい1パス目が重要であり、希釈率を30%以下とするために電流200A以下、溶接速度30cm/min以下を推奨します。2パス目以降も電流を上げずに、溶接速度で脚長を調整します。


<その他注意事項>

・電炉材の場合は、PやSが高いことがあります。ミルシートを確認し、0.030%以上は注意が必要です。

・なお電炉材では、P,Sの確認も重要ですが、電炉材をSUS309系溶接材料で溶接した際にSS400の熱影響部の溶融境界近傍に割れが発生するケースがよく見られます。原因や対策は不明ですが、かなり多くの割れの事例があるようです。なるべく高炉材を使うことをお勧めします。


図1 シェフラの組織図を用いた溶接金属の組織の推定


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