大阪大学大学院工学研究科
荻 野 陽 輔
1. はじめに
アディティブマニュファクチャリング(AM:Additive Manufacturing)プロセスは、ニアネットシェイプな構造物を高効率に作製できるプロセスとして、近年急速な発展を遂げており実用化が進んでいる。とりわけ金属材料に関するAMプロセスは、材料に対してエネルギーを集中させることにより材料の溶融・凝固を繰り返しながら積層物を形成していくプロセスであり、エネルギー源の種類や供給される材料の形態、材料の供給方法によってさまざまに分類されている。本稿ではエネルギー源としてアークプラズマを用い、材料をワイヤとして供給する「ワイヤ−アーク金属積層造形(WAAM:Wire Arc Additive Manufacturing)プロセス」に着目する。WAAMプロセスは、ティグ溶接あるいはミグ・マグ溶接プロセスとほとんど同じ装置構成・原理にて成り立っている。
現状においてAMプロセスは事前に準備されたレシピ(プロセス条件)に従うことで品質の担保された構造物を作り出すことができているが、このレシピは膨大なる試行錯誤の上に成り立っている。つまり、AMプロセスを用いて新しいものを作り出すためには非常に大きな労力がかかってしまうこととなる。せっかくの高効率プロセスも、使い勝手が良くなくては実適用へのハードルは高いというのが実情ではないかと考えられる。この課題をクリアするためには、プロセス中の現象をしっかりと理解して、プロセスの結果を予測・コントロールできるようになることがキーポイントであると考える。前述の通り、AMプロセスは溶接プロセスと同様の原理によって成り立っているので、溶接プロセス分野において培われた知見をうまく活用することが重要である。本稿ではワイヤ材料をアーク放電の電極として利用しつつ連続的に供給するミグ・マグ溶接方式のWAAMプロセスに着目し、ガスメタルアーク溶接(GMAW:Gas Metal Arc Welding)プロセスのシミュレーションモデルを活用・展開することを考える。