相談例64.すみ肉溶接の有効長さの解釈について
すみ肉溶接の有効長さの解釈についてご教示願います。図1のパイプとそのフランジをリブ(高さ70mmで、スカラップはR35mm)にて、脚長6mmの両側すみ肉溶接をします。
この場合の有効長さは、片側のすみ肉長さの事との解釈で良いのでしょうか?
設計者としては、鋼構造設計規準による強度設計に従いたいと思います。
回答
相談者から頂いた最初の図の溶接記号から判断しますと、リブ両側のすみ肉溶接は、連続しておらず単独でしたので、有効溶接長は片側ずつ考える必要があります。
また、鋼構造設計規準によると有効溶接長は全長からすみ肉サイズの2倍を引く必要があります。よって、有効溶接長=70−35−2x6=23mmとなります。したがって、サイズの10倍(=60mm)かつ40mm以上との鋼構造設計規準を満足しません。
ところで、鋼構造設計規準では、回し溶接をした場合も回し溶接部も含めた全長から2倍のすみ肉サイズを引いた値を有効溶接長としてよいことになっています。
よって、スカラップと反対側の端面を回し溶接として、連続溶接してください。そうすると、
有効溶接長=35(片側の実溶接長)+9(回し部の板厚分)+35(反対側の実溶接分)−2x6
=79−12=67mm
以上のようにしますと、すみ肉サイズの10倍(=60mm)かつ40mm以上となり、鋼構造設計規準を満足します。
注意していただきたいのは、回し溶接部を決してスカラップ側にしないようにお願いします。理由は、スカラップ側は健全な溶接をしにくいという点です。
なお、すみ肉溶接の記号を1つで共用しているのは、正しい表記にはなりませんので、別々の記号とし、辺の長さが35mmになる方の尾に、図1のように「スカラップと反対側を回し連続溶接」と注釈を記入するとよいでしょう。尾に表現する理由は、回し溶接の溶接記号がないからです。また、溶接施工にあたっては、溶接変形を拘束して連続溶接としてください。
図1 有効すみ肉長さについて