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第1回

相談例1.厚板の突合せ溶接(鉄製階段の側板)

鉄製階段のササラ(側板)を、SN490C、50mm厚、150mm長さの板継、K形開先両側溶接で製作する必要があります。製作要領書に積層図を入れるに際し、留意点を教えてください。

回 答

相談者から提示された開先(表側:45度 32mm深さ,裏側:60度 16mm深さ。裏はつり),CO2アーク溶接での積層例として、表側10パス,裏側7パスの溶接条件を提示し、下記の留意事項を挙げ、回答とした。要点のみを示します。

(1) 角変形対策

対象物の出来上り寸法として、角変形を出さないことが重要となる。工場として初の経験になるため①を推奨するが、下記の3つの方法の内いずれかを総合判断して採用する。

① 表側→裏側→表側の積層、裏側でガウジングとして、表裏の角変形をキャンセルする方法。最初の表側のパス数をどう決めるかが重要になる。

② 組立て時適切な量の逆ひずみを与え、表側→裏側の積層、裏側でガウジングとする。逆ひずみの量を実験で決める。

③ 表側→裏側の積層、裏側でガウジングとして、溶接完了後熱矯正を行う。

(2) 仮付け溶接

仮付け溶接として、SMAW E4916を推奨。短尺の継手であるので、表側の第1パスを仮付けと同じSMAWで、仮付けビード間を溶接する。すなわちE4916でのシーリングビードとする。

(3) 溶接条件

① 建物の主要構造部材ではないが、継手の強度確保上、入熱・パス間温度管理が必要。YGW11として、30kJ/cm,250℃を推奨するが、処理すべき継手数が多く、作業能率を上げることが望ましいのであれば、YGW18として40kJ/cm,350℃も考えられる。

② 溶接欠陥(特に融合不良、溶落ち等)を発生させないためには、適正なビード形状を確保することが重要。とりわけ、アーク電圧を適正値に調整することがキーになる。

③ グラインダ仕上げする必要上、最終層の表面ビードで過剰な余盛を避ける必要がある。最終層のビード形状全体を一様に低くするためには、低電流・低速度の条件が適当となる。


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