相談例3.亜鉛メッキ鋼板のピット、ブローホール対策
亜鉛メッキ鋼板(ZAM材)のピット、ブローホール対策には後進法が有効だと聞きましたが、本当でしょうか。その理由を教えてください。
回答
ZAM材(高耐食めっき鋼板)には、亜鉛、アルミニウムおよびマグネシウムがめっき材として付加されています。溶融池の温度はほぼ2,000℃程度とされていますから、溶融池が形成される部分はもちろんのこと、溶融池周辺部(熱影響部)のめっき層も部分的に溶融・気化し、沸点が比較的低い亜鉛(Zn)やマグネシウム(Mg)は気化してガスになります。これらのガスはアーク雰囲気中に拡散してスパッタ増加の原因になるとともに、溶融池金属内にも侵入してブローホールやピットを生じます。そのため亜鉛めっき鋼板などの溶接では、めっき層の亜鉛などを溶融金属で包み込まないようにすることが必要であり、
(1) 溶融池前方の亜鉛などをアーク熱で気化させる。
(2) 溶融池内に侵入した亜鉛などのガスの逃げ道を作る。
(3) めっき層を溶融金属で直接包み込まない(溶融池がアークより先行しない)運棒を行う。
などの事項が、めっき鋼板の溶接における重要なポイントであるとされています
ご相談の内容は、溶融池が先行してめっき層の金属を包み込み、気化した亜鉛などのめっき金属が溶融金属内に閉じ込められてブローホール・ピットとなることを防止するためには、トーチ角度は後進角とすることが有効であることを意味していると思われます。後進溶接では、アーク力の作用で溶融金属は後方へ押し上げられるため、溶融池の先行を抑制することができます。反対に前進溶接では、アーク力の作用で溶融金属は前方へ押し出されることとなるため、めっき鋼板の溶接では厳禁です。ただし、後進溶接にするとビード形状は凸となりやすいため、めっき鋼板の溶接でのトーチ角度は垂直(面直)が基本です。