6. おわりに
以上、ビデオカメラによる可視化という点で簡単にまとめると以下の通りである。
(1) アークの色や変動を観察するのには、NDフィルターで入射光量を減衰させたカラー撮影が適している。
(2) 溶融池の様子を観察するときは、近赤外で、アークの強い輝線がない特定波長の光をバンドパスフィルターにより選択透過させ撮影するとよい。
(3) さらに、(2)の特定波長において、同波長の半導体レーザを照明として用いると、溶融池とその周辺部まで、明瞭に観察することができる。
(4) 溶融池の形状変化を見るためには、従来ビデオカメラの撮影速度の毎秒30コマ程度で可能であるが、溶融池の対流現象を見るためには、毎秒1000コマ以上の撮影速度を有した高速度カメラの使用が望ましい。
今後、ビデオ機材のますますの普及により、アーク溶接を身近に録画する機会が増えるものと考える。今回、取り上げた中でも特に近赤外におけるフィルターの選択の話は、例に挙げたTIG溶接時だけでなく、当然MIG・MAG溶接時にも応用できる。本稿がその時の助けになれば幸いである。
謝辞
CRi社製VariSpec液晶チューナブルフィルターを使用するにあたり、快くお貸出頂いたフォトテクニカ株式会社川田 雅之氏および、機材類の写真撮影のご許可を頂いた大阪大学接合科学研究所レーザ接合機構学分野片山 聖二教授ならびに川人 洋介准教授に感謝の意を表する。
参考文献
1) 溶接学会編:"新版・溶接・接合技術入門"、産報出版 (2010)
2) 中央労働災害防止協会:"アーク溶接等作業の安全"、中央労働災害防止協会 (2009)
3) 安田克彦:"トコトンやさしい溶接の本"、日刊工業新聞 (2010)
4) 奥野勉、小嶋純、齊藤宏之:”軟鋼の炭酸ガスアーク溶接が発生する青光の実験的評価”、労働安全衛生総合研究所特別研究報告、vol.41、 pp.67-70 (2011)
5) 浅井知:”光学センサの使い方”、溶接学会誌、vol.69、No.2、pp.40-45 (2000)
6) 小川洋司:"アーク溶接現象の観察"、溶接学会誌、vol.72、No.6、pp.10-13 (2003)
7) 田代真一、田中学:"ヘリウムティグアークにおけるタングステン電極の表面温度測定"、溶接学会全国大会講演概要 No.80、 pp.112-113 (2007)
8) 田中学:"アークプラズマの基礎現象(連載講義 アーク溶接現象の基礎(1))"、溶接学会誌、vol.73、No.2、 pp.113-118 (2004)
9) 関英男、中島篤志、北村薫、大塚啓示、新井仁:"ワイドダイナミックレンジ視覚センサによる溶接現象の観察"、溶接学会誌、vol.70、No.7、 pp.8-12 (2001)
10) “NIST physical reference data base”、 http://physics.nist.gov
11) Heiple,C.R., and Roper,J.R.:"Mechanism for minor element effect on GTA fusion zone geometry", Welding Journal 61(4), pp.97s-102s (1982)
12) 日本溶接協会:"浪速博士の溶接がってん! ―ステンレス鋼のティグ溶接で溶込み深さが変わる?の巻―"、WE-COMマガジン第2号、10月 (2011)
13) 水谷正海、片山聖二、内藤恭章、"TIGアーク溶接時の溶融池内湯流れの表面・内部同期観察"、溶接学会全国大会講演概要 No.76、 pp.162-163 (2005)







