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アーク溶接のビデオカメラによる可視化の勘どころ
−民生用ビデオカメラから高速度ビデオカメラまで−

2.2 撮影速度

従来のNTSCビデオ機器においては、1/30インターレース(30コマ/s)が映像の録画速度であった。最近では、デジタルビデオへの置き換えや、デジタルカメラや携帯電話付属のビデオ撮影機能など多様な広がりを見せており、従来よりも簡単かつ高解像度での録画が期待できる。特に、アークや溶融池の平均値的な挙動をとりあえず観察するためには、簡便で使いやすい。しかし、高速な変動を解析するのには速度不足である。TIG溶接における交流・パルスモードや、MIG・MAG溶接の溶滴移行を観察するためには、最低でもそれぞれの周期の10倍以上の速度での撮影が望ましい。また、流れなどの運動を捉える場合、例えば1 m/sで移動する物体は、10 mm角の視野の中を僅か10 msで通り過ぎる。運動解析のために仮に10 コマ必要だとすると、最低でも毎秒1000 コマの撮影速度が必要である。実際に、アーク溶接時の溶融池における湯流れは、非常に速く、現象の把握には、高速度カメラが必須となる8)

2.3 ダイナミックレンジ

最近、高ダイナミックレンジビデオカメラ(WDR: Wide Dynamic Range、HDR: High Dynamic Range)がアーク溶接の観察に用いられるようになっている。従来のビデオカメラのダイナミックレンジはおよそ50dB以下であったが、現在では、100dB以上にもおよぶダイナミックレンジを可能にしたビデオカメラが出現している9)

従来のカメラの場合、溶融池に撮影光量を合わせた場合、アーク部分は非常に輝度が高く飽和して、スミアや白飛びの原因になるが、高ダイナミックレンジカメラの場合、輝度の高いアーク部分と輝度の低い溶融池を同時に撮影することが可能になっている。さらに、高速度でかつ高ダイナミックレンジをうたっているビデオカメラも出現している。

2.4 カメラ設置環境

アーク溶接時に発生する高温やそれに伴う紫外線、ヒュームおよび電気ノイズに十分注意を払う必要がある。強い紫外線が、カメラ周りや内部にある部品に経時変化を引き起こしやすいので、紫外線を遮光する対策が必要である。ヒュームは、蒸発金属が再凝集した超微粒子であり、機器内へ侵入した場合、回路を短絡させるなどの誤動作を引き起こす可能性がある。TIG溶接の高周波による点弧時のノイズは、簡単に弱電機器を誤動作させ、最悪損傷に至らしめるのでアース経路の工夫が必要である。また、アーク溶接時の大電流変化により、周辺機器が磁化されることもあり得るので、場合によっては、磁気シールド等も検討する必要がある。

ビデオカメラ撮影と同期して溶接電圧・電流を電気信号としてレコーダへ記録することが多いが、その場合、電圧・電流についての理解が不足していたり、見落としがあると、レコーダやカメラ自身が電流経路になったり、耐電圧を超える電圧が両者にかかることもあり、細心の注意が必要である。

3. フィルターの選択

3.1 減衰あるいは、ND(ニュートラルデンシティ)フィルター

アーク光を含んだ現象は、肉眼に取ってだけでなくビデオカメラに取っても明るすぎるため、通常何らかのフィルターをレンズと共に用いる必要がある。ちょうど溶接面の遮光ガラスに近い働きをするのがNDフィルターである。つまり、各波長の透過光を均等に減衰させるものである。但し、紫外域や赤外域に関しての減衰量は、保証されていないものが多く、予め調査する必要がある。カメラ機器メーカー製のNDフィルターでは、ND8とかの表現があるが、これは、透過光量を1/8にするということである。これは、光学機器メーカー製NDフィルター表現の透過率12.5%と等価である。


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