5.2 X線透過で見るA-TIG溶接時の溶融池の動き
ここでは、通常なかなか見ることのできない溶融池内部の動きについてX線を用いて観察した映像を紹介する。観察に用いた装置は、図9に示すリアルタイムX線観察装置である。X線源とX線可視化部(X線用イメージインテンシファイアと高速度カメラから構成されている)の間に試料をセットして、実際に溶接を行いながら、形成されている溶融池内部の挙動を観察する装置である。試験片の表層にW(タングステン)やPt(白金)をトレーサーとして埋め込み、その動きを観察する。Wは溶融金属の流れに乗って移動するので湯流れの観察用に、Ptは溶融金属中に溶込むため、溶融池の形成状況を把握するのに使用される。

図9 ステンレス鋼のTIG溶接時の溶融池内部の湯流れを観察するために用いたリアルタイムX線観察装置.X線源とX線用I.I.(イメージインテンシファイア)の間に試料がセットされる.X線用I.I.管面は、高速度ビデオカメラにより撮影される.試験片の表層にW(タングステン)やPt(白金)をトレーサーとして埋め込み、その動きを観察する.Wは溶融金属の流れに乗って移動し、Ptは、溶融金属中に溶込み、それぞれ、湯流れと溶融池の形成状況を把握するのに使用される.
まず、A-TIG溶接時の基本的な挙動を観察するために、スポット溶接を行った13)。その時のリアルタイムX線観察結果を図10に示す。また、映像については動画4(TIG)と動画5(A-TIG)に見るとおりである。トレーサにPtを用いて、フラックスを塗布しない場合と塗布した場合の溶融池の拡大状況の比較を行った。フラックスを塗布しない場合では、横方向へのみ溶融池が広がった。一方、フラックスを塗布した場合(A-TIG)では、中央で下方向へ潜り込む流れが見られ、深い溶込みが得られることがわかった。

図10 A-TIGスポット溶接時のリアルタイムX線観察結果(トレーサー:Pt).従来のTIG溶接(フラックスを塗布しない場合)では、横方向へのみ溶融池が広がる.一方、A-TIG溶接(フラックスを塗布した場合)では、中央で下方向へ潜り込む流れが見られ、深い溶込みが得られることがわかる.







