6.4.4 じん肺の健康管理
じん肺は,ヒュームや粉じんのばく露があっても初期にはほとんど自覚症状がなく,しかも発症するまでには長期間を要します。したがって,ともすると予防対策がおろそかになるきらいがあります。全社をあげての計画的な実行こそが大切です。
(1) じん肺の予防
じん肺の発症を予防するためには,ヒュームや粉じんの吸入を極力少なくすることです。そのためには,つぎの対策が必要です。
① ヒューム発生量のできるだけ少ない溶接材料を使用する。
② 換気,排気により職場内の環境空気をきれいにする。
③ 適正な保護具(防じんマスクなど)の着用を徹底する。
④ 休憩場所は,作業場と隔離されたところに設置する。
⑤ 衣服に付着したヒューム・粉じんは,職場を離れるときは払い落とす。
(2) じん肺健康診断
アーク溶接作業は,“じん肺法”において「粉じん作業」と定められており,従事する労働者は,次に示す “じん肺健康診断”を受診しなければなりません。
(a) 健康診断の時期及び頻度
① 就業時健康診断
雇入れ又は配置転換などによって新たに溶接作業に従事することになった人に対して,その就業の際に行う。(じん肺法 第7条)
② 定期健康診断
常時,溶接作業に従事の有無とじん肺管理区分との関連において,表6.5の頻度で行う。(じん肺法第8条)
表6.5 定期健康診断の時期及び頻度
| 粉じん作業従事の有無 | じん肺管理区分 | 頻 度 |
| 常時粉じん作業に従事 | 1 | 3年以内 |
| 2,3 | 1年以内 | |
| 常時粉じん作業に従事したことがあり, 現在は,粉じん作業以外の仕事に従事 |
2 | 3年以内 |
| 3 | 1年以内 |
③ 定期外健康診断
労働安全衛生法に基づいて,毎年一般健康診断が行われているが,その受診の際に,じん肺の所見があるか又は疑いがある場合に行う。(じん肺法 第9条)
④ 離職時健康診断
1年以上溶接作業に従事していた人又は従事したことがあった人で,表6.6の要件に該当する場合には,その会社を退職する際に,事業者に対して健康診断を行うよう請求することができる。(じん肺法 第9条の2)
表6.6 離職時健康診断の要件
| 粉じん作業従事の関連 | じん肺管理区分 | 直前のじん肺健康診断 から離職までの期間 |
| 常時粉じん作業に従事 | 1 | 1年6カ月以上 |
| 常時粉じん作業に従事したことがあり, 現在は粉じん作業以外の作業に従事 |
2,3 | 6ヶ月以上 |
| 2,3 | 6ヶ月以上 |
(b) 健康管理手帳の交付
じん肺は,溶接作業(粉じん作業)をやめても症状が進行するおそれがあります。そのため,じん肺管理区分が管理2または管理3の人には,離職の際または離職後に都道府県労働局長に申請すると,“健康管理手帳”が交付されます。そして,1年に1回住所地の都道府県労働局長が委託した医療機関で健康診断を無料で受診することができます。







