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第2回

相談例5.インコネル625溶接後のSRの必要性について

製鋼排ガス設備を材質インコネル625のチューブで溶接組み立て(MIG)していますが、溶接後のSRの必要性とその温度、時間を教えて頂きたい。

回答

インコネル625共金溶接継手は溶接のままでも耐熱性、耐蝕性、耐酸化性、耐クリープ性などの高温特性に優れたものです。インコネル625の溶接熱影響部では、炭素鋼、低合金鋼におけるようなHAZ 硬化・軟化、ぜい化等は発生しません。このため、各種の圧力容器規格・法規(例JIS B 8265)では、溶接後のPWHTを行わないとされています。今回、SRの理由及び使用環境がわかりませんので、その要否については判断できません。

なお、残留応力低減等の理由でPWHTを行う場合には、その温度に注意が必要です。インコネル625では850℃までの降伏強さは室温での値と比べてもそれほど低下しないため、残留応力除去のためには例えば900℃以上に加熱保持する必要があります。さらに、インコネル625の特性がこの熱処理によっても保証されるものかどうかをミルシート等で確認する必要があります。インコネル625チューブは引抜加工後に熱処理(1150℃付近の固溶化熱処理又は950℃付近の焼きなまし処理)されていますので、PWHTを実施するのであればその温度及び保持時間は素材の熱処理法を参考に選定願います。

一方、Cr-Mo 鋼等の低合金鋼との異材継手については、低合金鋼HAZの硬化、ぜい化防止のためにPWHTを実施する必要はあります。高温長時間でのPWHTによるインコネルへの悪影響を避ける場合には、低合金鋼側にバタリング溶接を行ってその部分だけを短時間のPWHT処理した後にインコネルとの溶接を行います。なお、インコネル718等の析出強化型合金では,溶接部の強化のためにPWHTが行われます。この場合にはインコネル718母材の熱処理条件が適用されます。
(SR:Stress ReliefをPWHT: Post Weld Heat Treatmentと同じ又はその1種と判断して回答しました。)

なお、本回答を提示後に相談者から寄せられた情報では、インコネル肉盛溶接したチューブ(素材不明、PWHTなし、異材継手?)を適用中であるが、ビードの繋ぎ部から割れが発生するのでインコネルチューブに変更を計画しているとのことであった。


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