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第2回

相談例6.溶込み量(脚長、のど厚、溶込み)の工程能力調査について

専用の自動CO2溶接機で4輪足回り部品を製造しています。3.5mm厚の平板上に37mm径(6.0mm厚)の鋼管を立て、全周を脚長4mmですみ肉溶接します。今回使用ワイヤの銘柄変更を顧客に相談したところ、そのワイヤで工程能力CP1.3以上の要求を受けました。試験の結果、脚長、のど厚はCP1.3以上を確保出来ましたが、溶込みはCP0.7となり満足できませんでした。溶接の溶込み具合を工程能力CP1.3以上を要求することは一般的でしょうか?

今までは、溶接余裕度調査(基準狙い位置よりずらしていき、溶込みが悪くなる狙い位置を調査)を実施してきましたが、他の顧客より工程能力を求められた事はありませんでした。

回答

橋、船、タンク等の構造物では一品物であり、溶接の品質保証は、WPS等でのプロセス承認、製造過程での検査・試験や最終製品検査で行われるのが通常であり、工程能力を要求された例はほとんど見られません。

一方、自動車、電気製品の部品等の量産品では、工程の安定が同一品質の品物を大量生産する上で重要となります。したがって、管理手法の一つとして工程能力の採用は、考え方として妥当なものと判断できます。

工程能力を工程能力指数,Cpで評価する場合、一般には基準値として1.3以上は一般的な値といえます。今回の相談は、製品およびその造りかたの許認可に係わる事柄ですので、どの指標をCpで押さえるのか、又その値をどうするのか、発注者とよく詰めて対応されることが重要と考えます。

折衝に際して、溶接技術上の観点から下記の事項を参考にしてください。

① すみ肉溶接での強度上の品質要求項目は一般には脚長・のど厚ですが、今回は溶込深さも要求されています。設計上、溶込深さはのど厚に加算しない値になるので、0以上は必要条件になるが、通常管理値としては扱われません。

② 要求されているCp3項目ともに下限値(Cpl)だけである。この値をCplの計算式、
Cpl=(a−LSL)/3σを用いて評価してみる。
(a:平均値,LSL:下限規格値,σ:標準偏差)
σはほぼ同じ値と仮定して、a(平均値)を大きな値に設定すると結果的にCplは向上する。
Cpは本来プロセスの安定性を評価するためのものであり、上記のような解釈は邪道かも知れないが、要求値を安定的に確保できる点で一つの考え方なる。

③ 脚長でのCplを考えてみる。下限規格値、4mmに対して、平均値を例えば6mmに設定すればCplはかなり大きな値になる(Cpl=(6−4)/3σ=2/3σ)。
なお、4mm程度の小さな脚長狙いで施工することは比較的難しい技術であり、6mm程度に設定することは現実的にも妥当と判断できる。

④ 一方、溶込深さの場合、下限規格値、0.72mm(相談者から後日得た情報)に対して平均値をどの程度まで大きな値に設定できるか? 立板(鋼管)側への溶込みは、開先を取らない限りあまり大きなものにはならない。またワイヤの狙い位置の影響が強く受ける値でもある。下板(3.5mm厚)側での溶落ち懸念等をも配慮すると平均1.5mm(1〜2mmに分散と仮定)程度が狙いになると想像できる。
この場合、Cpl=(1.5−0.73)/3σ=0.77/3σ
すなわち、脚長に比較して、1/2以下の小さな値になる。
なお、上記数値は、工程が安定していることが前提である。ワイヤ狙い位置の振れ、溶融池の状態、溶接条件のバラツキ等で溶込深さに変動が生じるため、かなり達成困難な数値でもある。このような溶接の現象を考えると、脚長・のど厚に比較して溶込深さで品質を保証することは難しいと判断できる(一般には、溶込深さ、0mm以上、すなわちプラス側にあることを条件にして脚長等で評価している)。

⑤ 溶込深さのCpを大きな値にするための対策にどのようなことがあるか、考えてみる。

ⅰ)溶込深さの目標値(平均値)をより大きな値に設定する。
平均値、1.5mm → 2〜2.5mmへ。
ワイヤの角度、狙い位置の適正化(ビード形状にも注意が必要)がポイントとなる。そして施工管理上難しいが、溶接電流を上げ、速度も多少上昇させる。

ⅱ)溶込深さの変動要因について注意をはらい、その変動幅を狭める。これらは結果としてσを小さくする。
・ワイヤ狙い位置の安定化
・自動溶接機の動きの安定化(倣い機構、条件制御等)


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